国際シンポジウム「デジタルシティのデザイン」 (2004.12.9)

デジタルシティを用いた危機管理システム

石田 亨
京都大学大学院 情報学研究科

デジタルシティを用いて危機管理システムを実現するために,社会中心設計と呼ぶ新しいシステム設計法を提案する.まず準備として,エージェントとユーザ間のインタラクションを記述するためのシナリオ記述言語 Qを開発した.また,FreeWalkと呼ぶ仮想空間と Q処理系を接続し,仮想空間内のエージェント群をシナリオで制御可能とした.社会中心設計は参加型シミュレーションと拡張実験を含む.参加型シミュレーションは,人間が制御するアバタとシナリオで制御されるエージェントが,仮想空間内に共存しシミュレーションを行うものである.一方,拡張実験は実空間で,被験者とシナリオで制御される人間のエキストラで構成される.

我々は実際に,社会中心設計を避難誘導システムのデザインに適用した.まず,20体のエージェントの内の6体を,人間が直接制御することによって,参加型シミュレーションを実現した.参加型シミュレーションによって,人間の振る舞いのモデルを正確にすることができる.次に,京都地下鉄に20台のカメラを設置し,乗降客の振る舞いを分析し結果を仮想空間に反映した.これによって,実空間の乗降客を仮想空間に再現した.鳥瞰図をスクリーンに投影することによって,実験をモニタ可能とすると共に,実空間で避難する人々をセンターから携帯電話で誘導可能とした.

Ishida 京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻教授, 上海交通大学客員教授, NTTリサーチプロフェッサ. 工学博士. IEEE Fellow. 自律エージェントとマルチエージェント研究に20年以上の経験を持つ. 現在,3次元仮想都市FreeWalk/ Qの研究を行い, デジタルシティに適用を試みている. また, 日中韓馬の研究者と共に, 異文化コラボレーション実験に取り組む. Kluwer Journal on Autonomous Agents and Multi-Agent Systems の編集委員, Elsevier Journal on Web Semanticsの共同編集長.

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